フルスポも出てプレリが目前となり、新環境の構築に試行錯誤している所だと思われます。
今までの環境は「フェッチ+バトラン」という、歴代でもかなり狂ったマナベースであり
「3色当たり前、4色、5色も割とアリ」といった、かなりゆるゆるの時代でしたが
その元凶でもあるフェッチランドが落ちるため、マナベースは激動します。
今回は、そんな次環境のマナベースについて考えたいと思います。

■「イニストラードを覆う影」の新ランドについて
まずはおさらいで、新しく追加されるランドの能力確認。
《港街》
港街が戦場に出るに際し、あなたはあなたの手札から平地・カード1枚か島・カード1枚を公開してもよい。そうしないなら、港街はタップ状態で戦場に出る

手札から公開する事でアンタップ状態になる、ちょっと変則的なM10ランドといった所でしょうか。

略称についてはまだ定まっていませんが、「手札から土地カードを見せることでアンタップインする」ことから
この記事では以降は「見せラン」という略称で記述していきたいと思います。

■「見せラン」は弱い!!
既にお気づきの方も多いと思いますが、一言で言うと、この新ランド、弱いです。
では、なぜ弱いかを順番に説明していきたいと思います。

■バトランと相性が良いという幻想
見せランが公開された時、誰しもが思ったであろうことは
「土地タイプを参照するという事は、バトランと相性が良い! なるほどそうやって使うのか!」…と。
僕自身、そう思っていたのですが、バトランとは相性が良いようで悪いです。

確かに、見せランをアンタップインさせるのにバトランは非常に優秀なのですが、
1T目に見せランをアンタップインさせてしまうと、その後バトランをアンタップインさせるためには

見せラン→基本地形→基本地形→バトラン

と、その後基本地形を起き続け、理想的な動きをしたとしても最短で4T目までアンタップインは不可能です。

3T目までに基本地形を2枚置くための期待値としては、基本地形が16枚は欲しい所ですが、
これはフェッチを失った今の環境では、基本地形そのものを16枚採用する必要があるということで、
なんと、この時点で
4:見せラン
4:バトラン
16:基本地形
    →合計24枚
と、理論上最適な置き方をするための土地構成が縛られてしまうのです。
そして、この条件を満たせるのはほぼ2色デッキに限られるため、実質的に見せランは2色デッキ専用と言って良いでしょう。


■他のあらゆる特殊地形と相性が悪いという現実
見せラン+バトランの構成が弱い理由として「その他のあらゆる特殊地形と相性が悪い」という点も見逃せません。
次期スタン環境で構築級の多色地形の筆頭として、対抗色ミシュラランド、および対抗色ダメージランドが挙げられますが
見せランもバトランも「基本土地タイプ」を参照しているため、そのほかのあらゆる特殊地形がノイズとなります。

そのため、他の特殊地形を入れれば入れるほど上記2つの土地(特にバトラン)のアンタップインが絶望的となり
見せランをアンタップインさせる為に入れたバトランが確定タップインランドになる
とかいう、本末転倒な状況となってしまいます。

今環境ではミシュラランドが特殊地形の中で頭ひとつ抜けて強いのは周知の事実だと思うので、優先して入れたいカードですし
「色マナ換算は余裕だから、《領事の鋳造所》や《魔道士輪の魔力網》を入れよう」といった
「無色のメリット持ちの土地のつまみ食い」的な行為も、マナフラッドに強くするためのテクニックでしたが、
そうすると「見せラン+バトラン」のパッケージが弱くなるので、どちらかを諦めざるを得ないというジレンマが発生します。
(そして、どちらを優先するかと言えば、ミシュラランドやメリット持ちの土地を優先する方が多数派だと思います)

2色であればある程度は許容できますが、これが3色以上になってくると、途端にこの特性が邪魔になってきます。


■実質M10ランドの下位互換
土地タイプを公開すれば良いという点で、M10ランドと似た挙動となりますが、
ゲーム開始時からどこかで1枚でも基本地形タイプを確保すれば良いM10ランドと異なり、
見せランは「手札にある」ことが条件となるため、M10ランドよりもかなり厳しい条件となります。

M10ランドと比較すると「1T目から2色が出る」ことが唯一の利点となっていますが、
その恩恵を受けるのは主に高速アグロなデッキであり、
ミッドレンジ~コントロール系のデッキからしてみれば
「トップから引いた6枚目の土地としてセットするときにタップイン…っ!」
というようなケースが頻発すると思われ、試合中にイラっとすること請け合いです。

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■マナベース実例
さて、見せランについて色々と述べた所で、実際のマナベース構築を見てみましょう。

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 ◆友好2色
4:赤黒見せラン
4:赤黒バトラン
4:山
12:沼
(合計24枚:黒20、赤12)
まずは友好2色。
赤黒ヴァンパイアをイメージしていますが、この形については非常に安定していると言えます。
3T目のダブシンも十分な期待が出来ますし、2T目に《闇の掌握》を打つことも出来るでしょう。
基本土地も16枚、公開用の土地も20枚換算であるため、見せランもバトランもアンタップインは十分可能であり

「事故のリスクも少なく」「ダブシンも運用可能で」「毎ターンアンタップイン可能」という
まさに理想とも言える土地構成が実現可能です。
次環境の友好2色の堅実なマナベースがあるからこそ、赤黒吸血鬼や緑白大変異等は安定して強いと思います。

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 ◆友好3色のダメな例
4:青白見せラン
4:白緑見せラン
4:青白バトラン
4:白緑バトラン
4:青緑ミシュラン
6:森
(合計26枚:白16、青12、緑18)
では、見せランの弱さが際立つダメな例がこちら。
バント中隊を意識して組んでみた構成となり、色マナ換算だけでいけば何とかなりそうな気もします…が。

公開用の土地こそ14枚あるため、見せラン自体はアンタップインが出来ますが、
基本地形が6枚まで減ってしまうため、バトランのアンタップインはほぼ絶望的と言えます。
すなわち、この構成では「12枚の確定タップインランド」が入っていると考えられるため
到底、構築で許容される速度ではありません。

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 ◆友好3色の模索(見せラン重視)
4:緑白見せラン
4:白青見せラン
4:青緑ミシュラン
1:緑白バトラン
1:白青バトラン
2:進化する未開地
3:島
6:森
1:平地
(合計26枚:青14、白13、緑17)
友好3色についてはまだ最適解は出ていませんが、
見せランを十分に使うとしたら、例えばこのような構築になるのではないかと思います。

色マナ換算は先ほどと比べるとかなり不安になりますが、
公開土地は12枚、基本地形は12枚で、見せランがアンタップイン扱いできるとすれば、
確定タップインは6枚、バトランもやや不安ですが、枚数を抑えているため
それほどテンポを阻害せずに3色揃えることは可能だと思います。

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 ◆友好3色の模索(見せラン放棄)
ChannelFireballのPascal Maynardの記事で興味深かったのが以下の記事
 http://www.channelfireball.com/articles/the-diary-of-a-pro-player-preparing-for-shadows-over-innistrad-standard/
3:平地
4:森
2:島
2:青緑ミシュラン
2:青白バトラン
4:緑白バトラン
4:進化する未開地
4:ヤヴィマヤの沿岸
(合計25枚:青14、白13、緑18)
先の例と真逆に、見せランをばっさり切った構成。
《進化する未開地》を入れることで、基本地形の水増しと色マナの安定を図り、
色マナ換算は十分。そして基本地形も13枚あるため、バトランもそこそこアンタップインしそうです。

何より、新環境のデッキの記事であるにも関わらず、
見せランを1枚も使っていない
というインパクトに笑ってしまいましたw

しかし、そうなるくらい「見せランは弱い」という良い例になったのではないかと思います。

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という訳で、何かが掴めたような、全く掴めていないような記事となってしまいました。
これをベースに、デッキ内のダブシンの数や、タッチ具合などで微調整を進めていく事になると思いますが、
何となく次の環境の難しさは分かっていただけたかと思います。

要点を最後にまとめると

 ・見せラン+バトランは事実上2色専用パッケージ
 ・友好2色はド安定(対抗2色もミシュラン+ダメランで安定)
 ・3色以上は茨の道。タップイン枚数と色マナ換算の天秤が常に付きまとう


といった形ですね。
正直、自分もまだまだ模索中で、中途半端な考察になってるのは否めないですが、
こうして新環境に対して頭をこねくり回している時がマジックの面白い時でもあるので、
今後どんどん煮詰めて行きたいと思います!

個人的には、友好2色が板だという事は理解しつつも、
やはり3色の夢が諦めきれないので、3色デッキのあるべき姿を模索したいと思います。

コメント

M
2016年3月30日1:02

基本2色環境にしたいんじゃないかなぁ、と思いますよ。2色ならこのレア土地もそこまでひどくはなさそうですし。3~4色が当たり前っていうラヴニカ以降の土地基盤の環境が恵まれ過ぎた、と長年やってて思うんです。

ミートボウズ
2016年3月30日8:08

ありそうで無かったこの手の考察日記、新環境考える上で非常にありがたいです。
この土地のバランス問題は、結局のところGP東京が答え合わせ的になるのでしょうが、、、最良の回答がどうなるか?模索する過程が一番の醍醐味ですよねー♪

chucky
2016年3月30日12:46

非常に勉強になりました!
土地の強さはこれくらいがちょうど良い気がします。

リンク張らせてもらいました。

sakasita
2016年3月30日12:57

個人的には、二色で組んで採用するからちょうどいいッて感じてます。
カードプール的にも三色やるメリット薄れますし(カマキリとかサイとか)大変なのはラリーくらいではないでしょうか?(ジェスカイt●コントロールとかマルドゥミッドレンジとかはカードが結構落ちるはずでし。)

sakasita
2016年3月30日12:59

↑ごめんなさい。ラリーも運命再編だから落ちますね…

ちゃんどら@T.A.T.
2016年3月30日23:18

新環境について非常に参考になりました。
ありがとうございます。

himajinn
2016年4月12日19:30

常に面白い文章でした。
内容もほぼ同意なのですが、結論は真逆で、「見せラン」ではなく、バトランが弱いの思います。
現代マジックで3t目までは確定タップインする土地は2tに闇の掌握やシルムガルの嘲笑を用意したいコントロールデッキにおいても使いずらい気がします。
「見せラン」はミラ傷ランドのようなもので序盤に動きをとりたいデッキには十分使用に耐えるものだと思います。

長文失礼しました

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